二つの親 10

其れを冷静な目で見ていた純也は自分の中で何処かぼんやりしていた進路がもしかしたら開けたと感じて居たのである。 ここまでまでが前回 弁護士の資格を取る。 そう高雄に話したのはそんな事が起きた数日後の事であった。 丁度、創応大のキャンパス食堂で珍…

二つの親 9

有村や、支援者の熱意を純也は目の当たりに今見ているので有った。胸に込み上げる熱い物。其れは一体何であるのか彼はまだ分からずに動揺している。ここまてまが8 それから一時間の時を支援者はワイワイ 言いながら、三々五々帰って行くと家族だけになって、…

二つの親 8

支援者の会議室は光の住む兄の家の書斎であった。小金井街道を清瀬方面に車を走らせていくと小平市に入ったところの鈴木町の交差点を左に曲がるその道道は古くからある大きな農家が何族か並び、新しくビルが建ったりと旧新の時代が入り交じった町並みだ。鈴…

二つの親 7

「淳也、今度こそはもしかしたら再審請求何とかなるかもな、警察も尻を上げたようだよ。」 高雄は感慨深げにそう言って純也の肩を叩いた。 それでも純也は不安だった。この十四年間何度も請求しては却下されて来た。その経緯がそうさせるので有る。 「どうも有…

二つの親 6

三鷹市井口に住むサラリーマンは櫻井と、名のっている。その日、飲みに三鷹駅に降り立った。そこで支援者に聞かれたのである。武蔵境と三鷹市の間を通る富士見通りの信号を超えて少し深大寺町に向かったところに自分のマンションが有る。富士見通りの角のコ…

二つの親 5

其れは光にとって、どれほど力強い味方で在ろうか。一筋の光が差し込んだようであった。中川浩は事件から12年たって、勤め先には辞めると言い残し、それから三年の間行方が掴めないままであった。携帯も使用を辞めたか新しく購入したかでそこからは所在を掴…

二つの親 4

日本の法の元では結審した刑を裁判のやり直しに持って行くのは本当に指南の技でとてつもない時間をかけて命を削って支援者達が立証し嘆願しても差し戻し裁判が棄却される事は珍しく無い。 汚名を着せられた者が悔し涙を流してどれだけの受刑者が犯罪人のまま…

二つの親    3

純也は鈴木夫婦の影響を受けて正義感の強い青年と育って居た。そして二つの親を持って違う世界を見つめて来た事が其の人としての精神を形成していたので有る。法学部で学んで居るが進路を決めなければならない時期が来て居た。産みの父親が無実を訴えて続け…

二つの親 2

光はその間に夫、生田清志に担当の伊藤弁護士を伴って面会をした。純也を養子に出すとなれば正式な手続きを踏まなければならないからだ。清志は涙ながらも我が子の幸せを願い養子に出す決心をしたのである。ただその清志の姿は痛ましく、「やっても無い事で俺…

二つの親 1

美野沐(みのう) 虐め 世間は無常に陥る事は多々有る。大人では其れも熾烈極めるが其れは子供の世界でも同じであり、時によっては大人の世界よりも辛辣である。今、目の前にいるこの子供に私はどうしたら生きる勇気を引き出し希望を持って学校生活を送る事を…